講師伝
嫌いな人、とは?
H.Nは、自分に自分で線を引いてしまう人間が嫌いだ、と公言している。
実はH.Nは、赤系統の色と緑系統の色を識別することが困難な色覚特性を持っている。
そしてそれが原因で、昔に三交代でオペレーターの仕事をしていた時に、失敗したことがあった。
普通の人ならまず間違えない単純な分別作業だったのだが、H.Nにとっては不可能な作業だったのだ。
それ自体は先輩がそのことをみんなに告げてくれて、なんとかことなきを得たのだが。
H.Nは思った。
このままオペレーターでいては、また同じ失敗をすると。
だから、早くプログラマーへと昇格するべきだ、H.Nはそう考えた。
その後H.Nは一所懸命に勉強し、四年後に本当にプログラマーへと昇格することになる。
だが、皮肉にもちょうどその頃、カラーの端末が導入されてしまった。
データもグラフも白黒からカラーになってしまったため、またH.Nの色覚特性が足を引っ張ることになってしまう。
そこでH.Nは、今度はSEへと昇格することを志すのだった。
誰にでも弱点はある。
だが、それが関わらない仕事だっていくらでもあるのだ。
環境を恨むだけでは、決して良い方に変わることなんて出来やしない。
それをバネにして上へ進むべきだ。
つまり。
H.Nが嫌うのは、自分にはここまでしか出来ないと勝手に線を引いて、自分の可能性を狭めてしまう人間ということだ。
誰にでも可能性があると信じるH.Nにとって、それはとても悲しいことなのだ。