| 「そろそろ、志望したい企業は決まったか?」 |
| 「ええ、無難かなって思うところが見つかりました」 |
| 「はい、決まりました!」 |
| 「よし、どこだ?」 |
| 「僕は」 |
| 「はい! ○○百貨店の販売員です!」 |
| 「………………(言わせて)」 |
| 「前から考えてたんですけど、やっぱり服に関する仕事がしたいなって思って。それで、特に何がしたいかなって考えたら」 |
| 「販売員、というわけか。ふむ……何故、○○百貨店なんだ?」 |
| 「え? だから、服の販売が……」 |
| 「服の販売がしたい、というだけなら○○百貨店である必要はないだろう?」 |
| 「……………」 |
| 「しずか、笑ってごまかすな」 |
| 「しずかさん、ちゃんと企業分析はしたか?」 |
| 「しましたよ! サイトも一通り目を通しましたし、昨日はいきる連れて上から下まで見て回ってきましたし!」 |
| 「……………」 |
| 「……そういえば、いきる君が妙にぐったりしているな……そうか、デートだったからか!」 |
| 「「違います!」」
|
| (2人とも息ぴったりだ……) |
| 「まあいいか。それよりも企業の分析だったな」 |
| 「「はい!」」 |
| 「そうだな……そもそも企業分析は何のためにしている?」 |
| 「え…………しておけ、って言われたから?」 |
| 「うん、わたしが過去に聞いた中でもワースト5に入るくらい残念な回答だな」 |
| 「……どうアピールするか、調べるためですか?」 |
| 「ん~……だいたい当たり、かな」 |
| 「だいたい、なんですか?」 |
| 「ああ。そうだな……じゃあ、具体的に、何を知っていればアピールできるようになると思う?」 |
| 「………わかりません」 |
| 「そういうことだ。前に業界選びの手段として、自分の長所を活かせるところを探す、という話をしたのは覚えているか」 |
| 「あ、はい」 |
| 「あれはつまり、自分が企業に対して何が出来るかを見つけ出すということだ。そしてそれを想定するには、その企業の未来を描けていなければならない」 |
| 「未来………」 |
| 「そうだ、未来だ! つまり企業分析は、それを知って、自分がそこに貢献できるかを知るために行うものなんだ!」 |
| 「なるほど……どこを見たら分かりやすい、とかありますか?」 |
| 「そうだな、一番有力なのはやはり社長の言葉だ。だいたいは将来のビジョンについて書いてある。そこの会社が将来、何を目指しているのかが、な」 |
| 「そっか……わかりました!」 |
| 「よし! じゃあ、今日はこれまでだ!」 |
| 「ありがとうございました!」 |
| 「はい、ありがとうございました!」 |
| 「……………ん? 何か忘れているような」 |